コートのポケットの中で、ケータイが二度ほど振動した。
今ボクは図書館の児童書コーナーに恥ずかしげもなく立っていて、神話系ハイファンタジーの厚い本に手を伸ばしていたところだった。
誰からだろう?
二回で止まるバイブはメール受信の報せだから、慌てることはないけれど。
本を棚にいったん戻してケータイを取り出すと、チカチカと点滅するLEDの色にはっとする。
彼からのメールだ!
さっきまで手を伸ばしていた本のことがすっかり頭から吹き飛ばされ、ボクは画面に目を走らせた。
あぁ……!
全部を読み終わるや否や。
ボクは嬉しくて。
頬を染めて目をぎゅっと瞑り、ケータイを胸にそっと抱きしめた。
そうでもしなければ、溢れてしまいそうな歓びに地団駄を踏んでしまいそうだったから。
想いが言葉を超えてまっすぐに伝わりあうことで生まれる満ち足りたこの想いは、彼が教えてくれた。
それは誰にも触れさせない、二人だけで分かち合うもの。
もう一度そっとケータイを開いて画面をスクロールさせ、ボクは確信する。
彼も、ボクと同じように想っているのだって、信じることができる。
だからきっと、こんなにもまっすぐにボクの胸にまで届くんじゃないかな。
ブラインドの隙間から射しこんだ西陽は床にオレンジの滴を落としている。
あの音は、誰かが本のページを繰っている静かな音。
時折、図書館脇の道路を走る車の音が近づいては遠ざかった。
外は未だ冬。
今日は気温も上がらず冷えるけれど、心は暖かかった。
ボクは名残惜しい気持ちをぐっとこらえてケータイを閉じ、先ほど手を伸ばした本に再度手を伸ばす。
逢える時も、逢えない時も。
同じように降り注ぐ幸せを、
ボクも彼に渡してあげられていたらいいな、と思いながら。
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