posted by 渡月・トワヤ
at 14:01:38 │
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空へまっすぐ伸ばす枝に、白い花が咲いている。
今年は少し開花が遅いらしく、今が見ごろを迎えていた。
心なしか、遠く見える桜の枝も赤みを帯びてきたみたいに見える。
視線を落とせば、今はなんの作物も植わっていない畑の隅っこに黄色や白や紫のクロッカスが咲いていた。
春の足音は、そこかしこに。
うららかな陽射しが揺れる、晴れた日の午後。
寮の周辺を散策に出かけたボクは、この昼間の時間帯にすれ違う家族連れの多さに少し首を傾げ、あぁ、と納得する。そういえば、今日は春分の日だった。
今月頭に卒業し、進路も無事に決まっているボクは今、けっこうお気楽に日々を過ごしている。そりゃあ、来月からは大学生で、そのための準備は進めているけれど、高校を卒業した今のボクにとっては毎日が休日みたいなものだったから、曜日に縛られることもなければ、カレンダーの今日の日付が赤でも黒でも、別段構わないでいられるのだった。
歩く速度で、陽光がちらっとボクを射て。
ボクは目を細め、天を仰ぐ。
白い花が綻ぶ枝ごしに見た空は青く、高く。
かすかに風に乗って届くのは、清々しく甘い花の香り。
──ああ、春がくる。
ボクは深呼吸ひとつして、自分の胸に去来する想いを一つ一つ確かめた。
だいじょうぶ。
その結論を後押しするように、小さく微笑みながら「うん」と小さく頷いて。
そうして春の陽射しのなか、大きく腕を振ってボクはまた歩き出すのだ。
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