posted by 渡月・トワヤ
at 21:59:59 │
EDIT
結社棟の横を通っていたときのこと。
ボクはふと、ふわりと薫るような、風の色に気づいた。
「風なんて見えないじゃないか」と言われてもしょうがないんだけれど、
それは目で見える色ではない、ということだけ言っておこう。
ともかく、この時期にこの風の色は、とても珍しい。
一体どこから吹いているのだろう?
ボクは風の吹くほうへ歩きだした。
PR
:::::::::::::::::::
風だけを頼りにして辿り着いた場所は結社棟の一角。
「…こんちはー」
ボクは臆することなく、扉を開けた。
気になったことに背を向けるなんて、性に合わないもの。
とそこにいたのは、茶色のロングヘアをハーフアップにした女の子。
年齢はボクと同じぐらい…かな?
「うん…?見ない顔だね」
振り返った彼女は、ボクを一瞥し、何か用か?と訊ねる。
あぁ、そうか。
この立地条件を考えれば、此処が結社だということは、火を見るより明らかだ。
「あーととと…実は入団したいんだけど!」
考えるより先に、口が動き、ボクは帳尻を合わせるように、にっと笑ってみせた。
「あぁ、そういうこと」
彼女も合点したように微笑んで、
「ようこそ『幸せの翠風』へ。歓迎するよ」
ボクへと手を差し出してくれたんだ。
いきなり入団を許可されるなんて思ってなかったから、「へっ!?」と鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしたボクに、彼女は
「あたしが2代目団長を預かってんだ」
とくすくす笑った。
あぁ…なるほど。
それから、彼女に案内され談話室へと赴く。
その場にいた団員へ向けて
「新規の入団者さんが来たぜ」
とボクを紹介してくれ、ボクも「どうぞよろしくな」とぺこっと頭を下げる。
新しい出会いがまたここから始まる。
期待に胸を躍らせるボクはその時、きらきらと煌く翠色の風を纏っていたに違いない。
posted by 渡月・トワヤ
at 23:59:59 │
EDIT
ただボクは、
共に奔りたいだけ。
通る道が違ってもかまわない。
いや、むしろ、違っていた方がいいね。
同じ場所に辿り着くように、共に駆けていきたい。
posted by 渡月・トワヤ
at 23:59:58 │
EDIT
「話が早い!」
今まで意識したことがなかったけれど、
その言葉はボクにとっての、すっごい褒め言葉らしい。
posted by 渡月・トワヤ
at 23:59:59 │
EDIT
空子の誕生日~白に彩~
(ボクのプレイングはこちら)
日曜日の夜。
晩飯を食い終わり、皿を片付けようかと立ち上がったところで、インターホンが鳴った。
こんな時間に誰だろう?
このマンションにはいつも守衛のおじさんが詰めていてくれてるから、
よほど変な人が入ってきて悪戯をするということがない。
ボクは思い当たる相手はいないものの、安心して受話器を上げた。
:::::::::::::::::::
インターホンの相手は、守衛のおじさんだった。
ボクは少し拍子抜け。
おじさんは「小包が届いたよ」と教えてくれたんだ。
生ものじゃないから、トワヤちゃんの都合の良い時で良いからね、とも言ってくれたけれど、中身が気になるじゃないか…!
「もうちょっとしたら、取りにいくよぅ!教えてくれてありがとうね」
ボクはインターホンを置き皿を手際良く片付けると、サンダルをつっかけて守衛室へ。
「はい、これね」
ありがとう、と受け取りつつ、小包が思いの他小さくて驚いた。
大きさから言うと、CDや本が入っているぐらい、かな。
赤い「ワレモノ注意」のシールが貼ってある。
しかし、通販で買ったCDはこの前届いたところだし、他には荷物が届くアテがまったくない。
送り主の名前は、とある会社の名前で、見覚えがない。
宛名は確かにボクの名前なのだけれど。
「…うーむむむ?」
少しやり場に困ったけれど、まぁ、ボク宛には違いないのだ。
開けたって、文句は言われないだろう。
「ありがとうね、おじさん!あぁ…そうだ。これ。いつもお世話になってるからー」
実家から届いたアジの一夜干しを数枚、おじさんにもお裾分けして、ボクはまた部屋へ戻った。
包みを慎重に開く。
万が一、間違いだったら、こそっとそのまま戻してしまおうと思って ←
新聞紙とプチプチに包まれて出てきたのは、白い皿だった。
…あ!
これは先日、近所の公園であった陶器市で、ボクが絵付けをしたお皿だ。
主催者側で絵付けを施された皿を持ち帰り、釉薬を塗って仕上げの焼き付けをしてくれたものだったのだ。
そういえばあの日、住所と名前を書いた紙を皿に添付していたんだ。
「後日送りますね」って、説明をしてくれたおじさんも言ってくれてたのに、すっかり忘れていたよ…!
自分が描いた絵が、ちゃんと皿に乗っている。
蔦と花を絡ませて、アールヌーヴォ調にしてみたもの。
市販の物に比べたらそりゃ拙くて恥ずかしいけれど、誰に見せるわけでもない。
梱包を取りはずして、ざっと洗い、先ほどの夕食の食器と共に乾かしておく。
使うのもったいない気もするけれど、
明日はケーキでも買って、これで食べてみようかなぁ…!
秋だからモンブランかな。
渋皮入りの栗灰色のが好きだけど、
果物たくさんのタルトも捨てがたい。
どこのケーキ屋で買おうかな~なんて、そんなことまで思って、一人ニマニマ。
posted by 渡月・トワヤ
at 15:30:34 │
EDIT
うぅ、寒ぃ…
久しぶりに晴れた日曜日の午後、ボクは屋上に上がり、空を眺めていた。
季節は秋から冬へと移ろいを見せている。
吹き抜ける風もまた、日増しに鋭さを増し、
眼下に広がる景色には、街路樹の紅葉が差し色の如く、灰色の街にちりばめられている。
:::::::::::::::::::
ボクはふと思い出し、階下のコンビニで買い求めていたホットの缶コーヒーをパーカーのポケットから取り出した。
まだあったかいそれは、ボクの冷えた指先にじんわりと熱を運ぶ。
フェンスに背を預けて屈み、コーヒーを開ける。
それで手を暖めつつ、胃袋も温め、ほぅっと息を吐いた。
後ろから、前から。
強く吹きぬける風を
まるで、今のボクみたいだと思う。
行き場を求めて彷徨うような。
だけど、まっすぐ進むしかない風。
きっと、目指すところはあるはずで
そこが海なのか山なのか、今はまだ良く判っていない。
ただ手探りで、明るいほうを探してる。
広い広い空。
どちらにだって、奔っていける。
立ち止まってもいいから、顔を上げておけ。
うつむく理由なんかひとつもないし、自分らしく在るのがいちばん。
ひときわ強い風が、背後から吹いた。
「そうだ、自分らしく在れ」
と文字通り、ボクの背を押すかのように。
ぶるっと身震いして、(もう冷めてしまっていたけれど)コーヒーをぐっと飲み干し立ち上がった。
もうあの風はどこにも居ないけれど、ボクは振り返ってにっと笑う。
「サンキュ」と小さく呟いて、それからダッシュで部屋へ帰った。