posted by 渡月・トワヤ
at 23:10:59 │
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重く垂れこめた雲のせいで、気温が下がらないまま熱帯夜。
今年も残暑は厳しいようだ。
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温い風が吹く屋上。
勉強の息抜きで少し夜風に当たりたいから付き合って。
そう言って、彼を屋上へ誘った。
うーんと身体全部を空に伸ばすと、固まっていた背骨がほぐれるみたい。
心ゆくまで伸びあがるとボクは、手すりまでタタタっと駆けた。
今日は月がのぼる時間も遅いから、
「晴れていれば星見には最適だったんだけどなぁ」
残念。
ボクは手すりを掴んだまま身体を前後に軽く揺らして苦笑いした。
「星を見る機会なら、これからきっと、いくらでもあるさ」
声の方に視線を移す。
ゆったりとボクの後ろから歩いてきて、隣に寄り添ってくれるひと。
闇に浮かぶその輪郭でさえ、愛しく想う。
「うん。それもそうだね」
ボクは晩夏の風の匂いを、胸いっぱいに吸い込んだ。
「さぁ、気分転換が済んだのなら、戻ろうぜ」
少しの間風に吹かれて後、ボクの頭にぽんと手を置いて、彼は言う。
手のひらの重みひとつ。それすらも、ボクにとっては幸福そのもの。
いただいた科白がすごぉーーくありがたぁーーーいことも、理解はしているけれどね。
ボクは現実に引き戻されたガッカリ感とともに大げさに溜息をつくと「はぁい」と気の抜けきった返事をした。
でも、逃げたって良いことなんかひとつもない。
無理やりでもいい。
前向きに考えてりゃなんとかなるし、なんとかできるものだってボクは信じてるから。
ボクは繋がれた手に引かれるまま屋上を後にする。
部屋に戻る前に食堂に寄って、コーヒーを作ってくことにした。
胃が悪くならないように、牛乳多めのカフェオレに。
その間、テーブルに頬杖をついて、彼はボクの所作を眺めていた。
「…そんなに見なくていいって!きっと何かが減っちまうから!」
見ても減るもんじゃなし、に対抗してみる。
でも、何が減るか、とは訊かないのが、お約束。(訊かれてもきっとスルーするけどな)
「うんうん」
判ってんだか判ってないんだか。
気前よく頷いているのに、相変わらず穏やかに微笑んでこっちを見てる。
その表情はすごく幸せそうで、だからボクはやっぱり嬉しく思うんだけれど、
「…だぁ、もう!」
赤くなった顔を見られるのもなんだか癪で、ボクは深く俯いて、使ったドリッパーやらスプーンやらを男前にガシガシ洗って片づける。
彼はそんなボクを見て、くすくすと笑っていた。
posted by 渡月・トワヤ
at 00:30:06 │
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雨の音が、まだ続く。
オルゴールつきのプラネタリュームのスイッチをオンにして、部屋の電気を暗くしたら、布団に横たわって。
腕の中にはやわらかな想い。
それじゃあ、おやすみ。
きっと明日もまた、気持ちいい風が吹くはずだよ。
posted by 渡月・トワヤ
at 15:38:02 │
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朝から降ったり止んだりしている雨で、どこかしっとりした一日。
静かに流れるアンビエントは、雨にそぼ濡れる鎮守の森に囲われた寺院を思わせるような閑かさを湛えたもので、今日の雰囲気にぴったりだ。
何処に出かける気にもなれなくてボクは、自室にこもって問題集とにらめっこしていた。
うむー。
どれぐらい問題をにらみつけていたのか。
なんだか眉間のあたりが強張っている。
背中をうーんと伸ばして大きく息を吐き出して。
ふと目に留まる、花と碧いグラス。
そのグラスは、青から緑のグラデーションに小さな気泡が浮かんでいるもの。
去年の修学旅行で沖縄に行った際に、ボクが制作体験した琉球硝子製のグラスだ。
ただのミネラルウォーターだってなんだかおいしくなるような気が(するのは、美ら海のグラデーションに似せた大好きな色合いの所為かなぁ、なんて半分自画自賛で思ってたりなんか)して愛用していたのだけれど、今年の夏はこの子に別の役割ができたのだ。
ゆるりと手を伸ばして触れると、菫色の小さなはなびらが揺れる。
造花の紫陽花。
雨の日の色にも似たこのグラスは、その子のための特等席に決めたのだ。
切り花が苦手なボクは一輪挿しや花瓶の類を持っていなくて、だからこの花を貰った時、どう飾ればいいのか、少し迷っていた。
自分が「交換しよう」と申し出ていたのに・・・後先考えなさすぎだっていうのは、まぁ別の話。
紫陽花、雨、紫、青、水の色…水……
想いをつないだ先には、答えを知っていたかのように碧色のグラスが待っていて、ボクは膝を打つ。
「そうか。ボクはこの紫陽花のために、あのグラスを作ったのかもしれない」
なんちゃってね。
とりあえず、グラスにそのまま花を挿してみたけれど、少しぐらぐらとして覚束なくて。
ボクはちょっと考えた。
花が咲く水辺を思わせる、さわやかな甘さが漂うコーンタイプのインセンスを何個かと、グラスと同系色のビー玉とを混ぜてグラスに軽く詰め、そこに花を挿した。
これでぐらぐらしなくなったし、挿す角度にもニュアンスをつけられるようになった。
うむ、満足っちゃ(思わず出るお国ことば)
実際、机につけば時折仄かに漂う水の気配が心地よかった。
今日みたいに夏の熱を冷ますような雨の日は特に、空気中の雨粒までもがその気配をより濃密にする感じがして、目を閉じると、花が咲き誇る池のほとりに居るかのような気分にさせてくれる。受験勉強で思うように海やプールに行けなかった鬱憤が紛れるような気もして、少しだけ気分的にラクになる。
机に片頬をつけたまま、ボクは紫陽花を見上げた。
この花に託された想いを、静かに想う。
願えば。
強く願えば、本当に叶うんだね。
もちろんそれは、ただ願えば目の前に「はい」と差し出してもらえるような甘ったれたものじゃないことぐらい、ボクは知ってるけれど。
庇に当たる雨音が耳に戻ってきた。さっきより、雨が強くなったみたい。
ボクはコーヒーを淹れるために立ち上がった。
ゴールは遠いけど、きっと到達できるはずだから、もう少しだけ頑張ろうと思う。
きっと最後まで、ボクは頑張れる。
近くで応援してくれる人もいる。その応援には、応えたい。
強く強く心に刻む、これもひとつの願いごと。
posted by 渡月・トワヤ
at 20:10:16 │
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日がまだ高いうちに出歩いたことが大きな原因だった。
陽射しが強烈過ぎたから、日陰を選んで歩いていたのだ。
それでも早く帰りたくて普段よりかなり早足で歩いたせいで、距離感が掴めなくなっていたんだと思う。
歩き慣れたはずの寮への帰り道が判らなくなり、迷子になるという失態……。
ボクは今、駅前のファストフード店に居る。
参考書を広げ、仕事を終えて帰ってくる彼を待っているのは、先日の一件で
「今度から晴れた日は、寮まで一緒に帰ってあげるからな」
と彼が申し出てくれたからに他ならない。
彼がそう言ったときボクは、
彼が仕事を終えるのは陽が落ちるころ、その時間ならばもう暑さで朦朧とすることもないんじゃないか?と思った。
それになんだか妙に彼が(堪えてるんだろうけど)ニヤニヤしているのもちょっと悔しくて。
でも、明らかにボクへ寄越してくれる視線には愛情が満ちているように感じられたし、そも、一緒に帰るという提案だって、ボクを大切に想ってくれているからなんだろうなっていうのも理解る。
……だから、内心嬉しかったりもしたけれど、それ以上に気恥ずかしくてボクは素直になれず、「う゛ー」と唸って彼を一瞥した。
乙女心は難しいのだ!(開き直り)
結局、彼の申し出をありがとう、と受け入れることにした決定打は、
「手を繋いで」
って言葉だったりする。うーん、弱いなぁ。自分。
そういえば、こうして、誰かとちゃんと待ち合わせるのは、初めての経験かもしれない。
特に、好きな人を待つなんて・・・。
そう思うと、ちょっと照れくさくて、ますます落ち着かない。
何度となく時計を見たり、参考書をパラパラめくったり、手帳を広げてペンでぐるぐる意味不明な線を描いて、また閉じて。
顔を上げてきょろきょろしたり、コーヒーをちびちび啜ってみたり、とだいぶ挙動不審になりながら、彼に逢えるそのときをそわそわと、待った。
薄く紫がかった藍色の空。
頬を撫でる、生暖かい風。
しっかりと繋がれた手。
どちらからともなくゆっくりした歩調になって、いつもの道。
そのすべてが、ボクを安心感で満たしていく。
今日あったこと。
もうすぐ夏休みが終わること、その先に待っている前期末考査。
そんな他愛のない話をし、なんとなくえへへと笑うボクに、彼は「やれやれ」とでも言わんばかり。
大げさに肩を落としながら、ふぅ とため息をつき
「えへへじゃないだろ」と言う。
…怒られちゃった。
ちょっとしょんぼりして、しおらしく「うん」と項垂れる。
でも。
こうして握ってくれている手は、大きくて温かく、そして際限なくやさしいまま。
「でも!こうして手ェ繋いで帰れるのが、嬉しいんだもん!」
素直にこういうことを言うのってやっぱり照れちゃうけれど、思わず口を突いて出たのは、伝えたかったから。
彼は、ボクの言葉に少し目を瞠り、それからぷぃと前を向いて
「・・・早く帰って夕ご飯を食べようぜ」
そう言い、ボクを半ば引っ張るように歩き出す。
でも、ぎゅっと握りなおしてくれた手が、彼の気持ちをちゃんと伝えてくれているように感じられて、胸の中がじんわりと暖かくなる。
「そだね。早く帰ろうー!」
欠けはじめたばかりの月はまだ明るく、柔らかい光に照らされて並んだ足元の長い影に目を落とす。
もう少しこのままふたりで居たくって、彼に引っ張られつつもボクは足を速めることをしなかった。
きっとお月さまにはお見通し。
でも月は何も言わずにボクらをやさしく照らしてる。しあわせの帰り道。
posted by 渡月・トワヤ
at 23:12:47 │
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ごーしちごーしちしち。
国語の勉強!
こ く ご の !(なぜか必死)
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バースディケーキの代わりのチョコレートやわらかくって甘いね ふたり
日陰だけ選んで歩くボクのことコドモのようだと笑う向日葵
切り花の菊の香りのたちこめる花屋の店先お迎えを待つ
あっけない夏の終わりに目を逸らす命のほのお燃え尽きたセミ
夜の空ひとつ花咲くたびごとに泣きたくなるほどあなたを想う
きゃあきゃあとプールから降る歓声を仰ぎ見ているセメントの路上
ほらあれがサソリの赤だと眺めてるプラネタリュームの底に沈んで
どこからか風に流され燻る香に夏の終わりが近いこと知る
強烈な日差しのせいで見失う 見慣れたはずの 寮までの道
(今日の生々しい背後体験を元にお送りする一首です。ガチで迷って遭難しかけた…みなさん、お大事に!←)