posted by 渡月・トワヤ
at 12:00:49 │
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ヴャウォヴィエジャの森。
閃光が走り、雷鳴がとどろく。
雪が舞い、突風が吹きぬける。
業火は夜空を紅く染め、未だ春遠い白き世界を照らした。
── 人狼の咆哮、生徒たちの鬨の声。
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救護所に運ばれる担架の中、一瞬見かけた姿に見覚えのある気がして、ボクは駆けていた。
見間違いだったら、いい。
それは祈りにも似た気持ち。
怪我を負った者・手当をする者。
その人波をかきわけたどりついたベッド。
果たして、およそ1ヶ月前に、この場所で共に戦ったばかりの仲間が横たわる。
あの時、不安に駆られたボクを叱咤激励してくれた人。
いつでもボクの少し前を歩いているようで、すっと伸びたその背に信頼を覚えた相手。
此処に運ばれたということは即ち、生命賛歌に救われたということ。
胸が上下しているのが見て取れる。ボクはひとまず安堵しながら、遠慮がちに話しかけた。
「…二度目の森なのに、感傷に浸ってる間もないよなァ」
声が震えないよう、腹から出したボクの声に、彼は閉じていた目を薄く開き
「……よう、トワヤ」
口の片側だけを少しあげて笑う。
笑える元気はあるってことか?
けれど相手の身体の痛みは如何ほどなのだろう。少なからず近しい感情を抱く相手だ。きっともしボクが彼の立場なら……強がる。だから。
「…ったく。卒業して鈍っちゃったんじゃないのー」
ボクは動揺を悟られまい、と軽口を叩き、視線を外す。
圭にーさんは、笑うようにふっと息を小さく吐き出して
「…まぁ、そこは可愛い後輩に活躍の場を…な?」
目を閉じた。
ボクは唇をきゅっと噛む。
まだ己の足で立てるボクにできることは、圭にーさんの言うとおり、戦うこと。
「……なーんて、冗談。さっさと寝て治せよ!んじゃ、ボクはまた行ってくるぜ!」
一息で言いきってくるりと踵を返し、救護所を後にした。
コマンダーから、向かうべき場所への指示が飛ぶ。
次の場所までは、もう少し。
隣を歩く恭一とつないだ手に力を込める。
もうすぐ、この手を離すときがくるけれど、ボクの心はいつだって、きみの隣に居る。それは、きっと、きみの心も、同じはず。
ちらりと視線を合わせ、微かに目を細めた。
前方に小さく、敵勢力の群れ。
「さあ、行こうか……」
「よし、行こう!」
するりと解かれる指。
ボクは前へと駆け出しながら、魔方陣を空に描きその力を享ける。
前へ、とにかく前へ進め。
posted by 渡月・トワヤ
at 16:26:12 │
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恭一から、ホワイトデーに贈られた指輪。
学校に居るときはさすがに外しているけれど、それ以外はいつも身につけている。
もちろん、眠るときも一緒だ。
明かりを消して布団に入り、掛け布団を鼻まで引っ張りあげる。
目を閉じたら、そっと指輪に触れ、すべすべした石の表面を指先で撫でる。
それは、ささやかなボクの日課。
自室でのんびりとミルクティを片手に、邦画を観ていた。
実はもう、この映画は何度も観ているし、原作も図書館で何度か借りて読んでいるので、先行きは判りきっているのだけれど。
ハッピーエンドと言い切れないこの映画の結末。そういう類のものはあまり得意じゃなく、普段はほとんど観ないのだけれど、これは観るたびにドキドキしちゃって新しい発見もあるし、いろいろと考えさせられるのが良くて。まぁ、ぶっちゃけ、好きな俳優が主演を務めているのが観るきっかけだったし、何度も繰り返し観る理由の最たるものなんだけどな!
そんな感じで、今日も無事にエンドロールを見納め、ドキドキが収まらないまま布団に入ったけれど、この指輪に嵌められた石に触れると、心に涼しい風が吹き、そして凪ぐ。
すべらかでひんやりした感触のせい?
石の淡い青灰色が、吸い込まれるような空の青に似ているのも、そう思わせる要因のひとつかもしれない。
だけれど、ボクにはボクだけの、日課にするだけの理由がある。
あれは、この指輪をもらって、わりとすぐの晩のことだった。
いつもと同じように石に触れたとき、ふと、ボクは気づいてしまったのだ。
その石に触れると感じる穏やかさは、恭一が傍に居るときと同じ感覚だということに。
彼がいつだったか言ってくれた言葉が耳に蘇り、ああ、彼が言ったことは本当だったのだと、自然に笑みがこぼれた。
いつだって、恭一が守ってくれている。
だからボクは今夜も、穏やかに微笑みながら、
幸福な自分を抱きしめて、眠りを迎えることができるんだ。
posted by 渡月・トワヤ
at 23:51:34 │
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昨日の夕方見つけたハクモクレン。
木の皮のような硬い蕾を割って出てきた花弁は、実は、まだ開花には至っていなかった。
ただ、遠目からはそこまで確認できなかったし、3日のブランクがあったのを忘れていたから、
まるで一夜のうちに様変わりしたような錯覚を覚え、大声を出してしまったというワケだ。
そうだな。
神さまがもし居るのなら、蕾の代わりに、真っ白の鳥をちょこんと乗せていって、皆を驚かせるためのイタズラをしたんじゃないか、と。
そんな感じ。(実際「おぉぉ!」と驚かされたボク)
夜。
ボクの幸運度回復にGTへ向かった際、先日銀誓館に編入したばかりの弟も連れ出した。
「コータの戦いぶりがどんななのか、しっかり見ててやっからな」
そう言って笑うと
「まだあんまり慣れちょらんけぇ、判定は甘めで!」
と拝んでいた。
ボクはニヤニヤして、それには何も答えず。
正直なところ、ボクはコータがやりやすいようにやってれば、それでいいと思っている。
強制したり押し付けたりするのは、好きじゃない。
「姉ちゃんはいつ覚醒したそ?」
GTの最奥を目指している途中、コータがそう訊ねてきた。
「んー。覚えてねぇや」
「えー!?」
明らかに不満の声をあげる。
「覚えてないのは本当だよ。幼稚園ン時にはもう勝手に、旅人の外套なんて発動してたしな」
こうして、弟と自分の能力のことについて話をすることになるなんて思いもしなかったなぁなんて、感慨深く。
「…へぇ。ちっとも、気付かんかったよ」
「そりゃそうだろ。一般人の目には、旅人の外套発動イコール見えなくなるってことだもん」
「あぁ、そうか」と彼は頷いて、ごく自然な調子で「姉ちゃんも大変だったんだなぁ」と呟いた。
…わかったようなことを言うようになったなぁ。
ボクは何も言わず、あいまいに笑った。
帰り道、吐く息は白かったけれど、なんとなくふらふらとそのまま散歩をする。
足は勝手に紫陽花会館へ向かうが、そのままにした。
まぁ、もうちょっと荷物もあるし、CDの入った段ボールぐらいは持って帰ろうか、とも思って。
昼間と夜とは、風景って、すごく違う。
あのハクモクレンの木が、月明かりに青白く照らされているのが見えた。
あ、と思い、足が止まる。
あの白い蕾が皆一様に、まっすぐ空に向かって枝に並んでいる。
その木立の様子は、さながら、夜道をぼんやりと照らす大きくて立派な燭台に見えた。
ボクは、不思議の国にでも迷い込んじゃったんだろうか。それか、ガリバー旅行記の巨人の国。
小さいころ物語で読んだ小人たちは、人間の暮らしとであった時、こんな風に思ったのかなぁ。
弟と久しぶりに直接話したせいか、自分が小さいころの(主に読んだ絵本や童話の)記憶が色々と蘇ってくるようだった。
自分がおとぎ話の世界に迷い込んだような、なんだか不思議な気持ちになって、ボクはしばらくハクモクレンの燭台を眺めていた。
posted by 渡月・トワヤ
at 16:45:57 │
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この連休の間に、ハクモクレンが、一斉に開花していた。
「おぉぉー!」
いつもの、下校途中の道。
遠目にでも、その開花には気づくことができる。
ボクが唐突に大きな声を出すもんだから、さすがの恭一も驚いたに違いない。
驚かせてごめん、と、ボクは進行方向を指差した。
「ほら、ね、咲いてたんだよ。つい大声を出しちまった」
ボクの指差す方向を確かめ、なるほど、と頷き、
「でも、いきなり大声を出すなよ。心臓に悪いからな」
と、ボクの額を軽く小突いた。
「ん、ごめん。気をつけるよ」
ボクはえへへと笑う。
それにしても、あんなに咲いちゃって大丈夫なのかなぁ…
今朝みた天気予報では、明日からまた、冬型の気圧配置になるって言ってたから、
寒さに凍えてしまわないか、ちょっと心配。
posted by 渡月・トワヤ
at 01:05:32 │
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去年の夏からずっと一緒だったあおと、しばらくのあいだ、バイバイ。
ボクの力では、充分に能力を活かしてあげられなかったから。
もうちょっとボクが強くなったら、また一緒してね。
いっぱい、ボクのこと、護ってくれてありがとう。
だから、ちょっとだけ、おやすみ。