posted by 渡月・トワヤ
at 16:58:23 │
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三寒四温。
週の中ごろに寒さがぶり返し(場所によっては、雪が降ったとか!)
週末にかけては、コートも不要なくらいの、春の陽気が戻ってきて、。
先週今週は、ずっとそんな感じで。
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2年生の最後のテストも無事に終わった。
正直なところを言えば、ボクの成績は、恭一と付き合いだしてから、右肩上がりだ。
彼に出会って、自分の目指すべき場所がはっきりとした。目標が定まれば、難しいことは要らない。そこへ向かって全力で走ればいいからだ。
もちろん、恭一も一緒に(まぁ、成績に関して言えば、ボクの少し前をだけど)走り続けてくれている。
時折、ボクがちゃんとついてきているか振り返ってくれるオプションもついている。
こうして一緒に励ましあい、刺激し合える相手でいてくれる彼に、心から感謝している。
さて、かねてから予定していたとおり、紫陽花会館から白銀寮への引っ越しもぼちぼち進んでいる。
学校からの帰りに元の部屋へ立ち寄り(もちろん恭一を連れていき)二人で荷物を抱えて白銀寮へ帰る、といった具合で、牛歩の如き地道で地味な引っ越し作業。
カナメが運送業者の手配を申し出てくれたけれど、お金がもったいないからと断った。それに、少しずつ物を持っていく作業、やってみると案外、楽しかったのだ。
新しい生活への移行期。
物事に追われるのが大嫌いでマイペースなボクは、自分のペースで引っ越しや片づけをやっていきたい。「早くしろ」と追い立てられると一気に気分を削がれ、まるっと放棄してしまう自信があるし…
だから、カナメや恭一が、意識無意識関わらず、ボクのそういうところを尊重してくれているのだと思えて、本当にありがたかった。
今日も紫陽花会館への道を、恭一と手を繋ぎながら歩いていた。
日ごと、陽は長くなり、今の季節は特に、向かっている方角の遠く、稜線の向こうへと太陽が沈みはじめる時間と下校時刻が重なるため、周囲がすべてオレンジの光に包まれはじめる。
隣を行く恭一のメガネが時折夕陽の光を反射してきらっとするのを見るのが、好きだ。
あんまり直視すると反射した光に瞳孔を直撃されてしまうし、恭一を見ていることがバレてしまうので、要注意。あくまで、こそこs……ごほっ。
実質、2年通った通学路。
どこに何の木があるのか、特にボクの好きな木蓮がどこに生えているかは、もうばっちり覚えている。
去年もそうだったけれど、春一番が吹くころからこっち、ボクは必ず木蓮の木を見上げ、つぼみの膨らみを確認してしまう。
いつごろ咲くかな。
実際は、まだまだ、なのだろうけど。
今日も同じ場所で、ボクは同じように木を見上げる。
隣を歩く恭一も、最初こそ「どうしたんだ?」と尋ねてきたけれど、それから毎日のようにボクがそこで木を見上げるもんだから、もうとっくに慣れっこになっているし、時々は、一緒に見上げたりもする。
ただ、ボクより見上げる時間は少なくて、ボクが納得して視線を前方へ戻すまでの時間、ボクが躓いたりしないように、配慮してくれてるようだ。
今日も満足いくまでつぼみの状態を眺めたら、
「へへっ」
ボクは笑って恭一を見、彼もそれに応えてくれて、ボクらは夕陽に向かって、また歩き始める。
posted by 渡月・トワヤ
at 23:59:29 │
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今日はホワイトデーだ。
だけどまぁ、ボク個人はどっちでも良いといった感じ。
バレンタインにチョコレートを渡した彼は、誠実で礼節を重んじるタイプだとは思っているけれど、そもそもチョコレートを贈ったのは見返りを期待してのことではない。
だからボクにとってホワイトデーは、ほとんど意味のないものという認識。
==========
日付もそろそろ変わろうか、という時刻。
「……遅くなったけれど」
そう言って恭一が差し出したのは、エンボス加工が施されたごく淡いアイボリーの小さな箱。赤いサテンの細いリボンがシンプルにかけられている。
「…ん?」
ボクはすぐにはピンと来ず、きょとんとした顔をしながら手を伸ばしてそれを受け取った。
そして
「あっ…!?」
気づく。
その意味と、己の鈍感さからの羞恥とで、耳まで赤くなっていくのが自分でも判った。
箱と恭一とを交互に見ながら
「これは、あの、そのー…もしや!」
しどろもどろ。
ボクのあわてぶりに、しょうがないなぁ、と言わんばかりの恭一。
「先月のお礼にね」
と微笑んだ。
そういう日だとわかっていても、びっくりした。
サプライズとは、こういうことを言うのだろうか。
「ああああ、開けてもいいでしょうかっ!」
ボクはかなり動揺してしまい、敬語まで飛び出す始末。
「ああ、そうしてくれ」
彼はもう、苦笑いするしかないようだった。
ボクはひとつ、深呼吸して。
しゅるっとリボンを解く。
蓋を開くと、柔らかな台座に守られた小さな指輪が、きらり光った。
ボクは言葉を失ってしまう。
頬を真っ赤に染めながら彼を見あげる。恭一は穏やかに微笑んだまま、ボクを見つめ返してくれていて。
その笑顔のおかげでボクの真っ白だった頭にも、思考が徐々に戻り始める。
「…綺麗な指輪……えぇと、本当にもらっていいの?」
の割りに、口を突いて出るのは、ちっとも気の利かない科白と、素っ頓狂な問い。
「そのためにあげたんだ。受け取ってほしい」
恭一はそんなボクに呆れもせず、変わらず静かにそう言った。
「…そりゃ、そうだよな」
相変わらず心臓はドコドコドコドコとひっきりなしに、まるで小太鼓を打ち鳴らしているかのよう。
あぁ、恭一にまで聞こえてしまうんじゃないだろうか。
そう思うと、ますます早鐘を打つボクの鼓動。
けれど、ようやくボクは「…うん。ありがとう」と破顔一笑、箱ごと胸に抱きしめた。
あっ、そうだ。
「ねぇ、つけてもいい?」
ぱっと顔を上げて訊ねると、恭一は「ああ」と頷きかけて止まり、
「いや、ちょっと待て」
とボクを制した。待て、と言われると勝手に動きが止まる、悲しきわんこ属性。
「…つけさせてくれないか?」
明らかに照れながら申し出てくれたその気持ちがうれしくて
「うん。じゃあ…お願い」
そろりとボクが差し出した手を恭一はすっと取りあげ、その指へ、するりと指輪を滑らせた。
「…ありがとう」
ボクは指輪の光る指をじっと見つめたまま、もう一度、お礼を言った。
「……ありがとう」
恭一もそう呟く。
お礼を言うのはボクの方なのにね。ちょっと可笑しくなって彼に視線を移す。
そしてボクらはそっと微笑みあった。
一人になった部屋でボクは、指輪をはめた手を近づけ遠ざけ、飽きることなく見つめ続けていた。
こんなに、溢れるほどの想いの結晶を、ボクのために用意してくれたんだね。
夢ではないのかと思ってしまうほどの多幸感がボクを包みこみ、胸はいっぱいになる。
ともすれば、涙腺が決壊してしまいそうで、
ボクは奥歯をぎゅっとかみ締めて、笑顔を作った。
周りに誰も居ないのだけれど、それでも泣いたらもったいない気がして。
「ずぅっと、大事にする」
ボクは小さく小さく呟いた。
posted by 渡月・トワヤ
at 23:48:36 │
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今週の黙示録。
どうしようか迷っていたときに、(自分もいろいろと不安だろうに)まいおが「こんなときだからこそ」とチームを立ててくれた。
そうだよね。
悩んだって沈んだって、何も変わらないし、
自分にできることを、できるだけ全部、精一杯でやっていくことって、大事。
「おまえって変わらないな」
少し前に小説で読んだその科白にボクは、その科白を言った登場人物が安心感を感じたのだと思った。
変わらないで居ること。
自分の両足でしっかりと立って
つらくなったときに、寄りかかってもらえたら、
「大丈夫だよ」って笑ってあげる。
それだけでも、きっと希望は生まれる。
今回の震災で、亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、
被害に遭われた方々へ、心からお見舞いを申し上げます。
一日も早い復旧復興と、皆様の心の傷がこれ以上深くならないことを、願うばかりです。
posted by 渡月・トワヤ
at 15:31:22 │
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陽射しはうららか。
だけれど存外、気温は低い。
テスト期間は、泣いても笑っても明日まで。
勉強にもだいぶ目処がついたので、ボクは休憩をかねて白銀寮の屋上に上がることにした。
窓から降り注ぐ、やわらかな陽射しに誘われたんだよね。
屋上への扉を開けるといきなり強い風に吹きつけられ、ボクは思わず「お、おぉぉ?」と声を漏らしてよろめいた。
これは、間違いなく春一番じゃない?
春の気配に、ボクの心は浮き足立った。
あおる強風に良いように髪を弄ばれながら、ボクは歩を進めて柵にもたれる。
このテストが終わればすぐに春休み。それが空けたら(今回のテストで軒並み0点でも取らないかぎり留年の心配もない)ボクも高校3年生だ。
こんだけデカい学校だ。
恭一や景持とは別々のクラスに、ひいては別々のキャンパスになっちゃうのは、想像に容易い。
1年ン時一緒に騒いでいたクラスメイトたちも5人ぐらはいたのに、2年では誰とも一緒のクラスになれなかった。結社や依頼で知り合った仲間すら、誰とも一緒になれなかったなぁ。
少し寂しい気もするけれど、まぁ、しょうがない。
こういうのは、なるようにしか、ならんもんね。
柵にもたれたまま、傾きかけた太陽が照らす景色を見渡した。
視界に入った建物や木々にはすべて、はちみついろの薄布がかけられ、
それらは、淡く金色に光を放っているみたいだ。
やっぱり、屋上から眺める景色は好きだな。
寒くもなく、暑くもない。
そんな季節の、この時間が一等良い。
この季節なら、屋上で何時間も過ごせる自信がある。
さすがに今日は、まだテスト勉強中。
もともと何時間も此処で過ごすつもりがなかったから、温かいカフェオレの入ったステンのマグや、小説を持ってきていない。
ボクは涙を飲み、屋上を後にする。
ここで何時間も油を売るわけにはいかないのだ。
高校3年生。
受験生。
来年の今頃は、今のボクが目指している未来にきちんとたどり着くことができるよう、今やるべきことをやる。
ただ、それだけを日々積み重ねていこううと思う。
posted by 渡月・トワヤ
at 00:45:53 │
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