posted by 渡月・トワヤ
at 23:50:54 │
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凍てつく風が、肌の露出部分を、ことごとく突き刺していくみたいだ。
ジーンズにしてきて良かったぁ…とか、
スカートとか履いてたら、きっと泣けてた…とか、
あっ、そもそも今日は、スカートなど履いてくるべきシチュエーションではないのだった、とか。
ボクは頭の中でぐるぐるくだらないことを考えて寒さを紛らわそうと試みていた。
しかしどう転んだって、寒いものは寒い。
小さく震えながら目をぎゅっと閉じるとマフラーに鼻先までを埋めて、「うぅ~」と唸った。
隣に立って時刻を確認していた恭一が、視線を時計からボクへと移して、少し困ったように笑った。
「もうすぐ来るから、な。」
小さい子をあやすような口調だけれど。
恭一にそう扱われるのは、どこかくすぐったくて、嫌いじゃない。
「…ん」
小さく頷いて、かじかむ指先を確かめるように、繋いだ手を握りなおした。
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恭一の言葉通り、ほどなく到着した1台のバスに、列をなしていた人たちは黙々と乗り込んでいく。
皆、身体が芯から冷えていると思う。
バスの中はすでにじゅうぶんに暖房が効いており、ボクらとともに並んでいた人たちの安堵のため息と、遠慮がちな会話が聞こえはじめる。
座席の位置を確認していたら、恭一が頭上のラックへ荷物を上げてくれる。
小さく「ありがとう」と言って、シートに腰を下ろした。
車内は、普段乗る路線バスとも遠足で使うような観光バスともちょっと違っていて、縦3列の独立したシートだった。座席は一つずつが結構大きくてリクライニングもでき、毛布もちゃんとそろえてある。バスの中心あたりには、少し降りる階段があって、その先はトイレになっているようだ。
ほどなくして、街灯が照らす中、バスは動き出す。
そわそわきょろきょろ、と落ち着かない様子で車内を見回していたら、隣に座った恭一と目があう。
「……まったく。」
しょうがないなぁ、とでも言わんばかりに、くすくすと笑う彼。
ボクは、エヘヘと笑った。自分の頬が上気しているのを自覚する。
だって、こんなに嬉しいことってない。
明日のことを思えば、緊張で眠れるか、今から心配はあるけれど…
でも、ずっと隣に居てくれるから、大丈夫だよな。
いつしか後方へと流れる車窓の明かりは消えていた。
ギアチェンジの揺れもなくなり、ゴォォォ…という継ぎ目や揺れのない路面を拾うタイヤの音が続いていることから察すると、すでに高速道路に入ったのだろう。
車内の照明を消します、というアナウンスとともに電気は消され、社内を仄暗く照らすのは常夜灯と非常出口のグリーンの明かりのみ。時折、対抗車両や後続車のヘッドライトが照らしては消える。
ボクは椅子を軽くリクライニングして肩まで毛布をかぶると、恭一の方を向いた。
闇の中で、彼の輪郭がボクの方を向いていることだけは判る。
一晩中、こんなに傍にいられるなんて…今でもちょっと信じられない。
そう思うと、顔から火が出てしまいそうだ。
…暗くて、良かった。
どこかしら不安になりそうな心が、ボクの手を、彼へと伸ばす。
恭一は、ごく当たり前の動作で、指を絡めて優しく握ってくれた。
そしてそれは、まるでボクの望むとおりに、ボクの心を穏やかな暖かさで満たしてくれるのだ。
「…おやすみ、恭一」
「ああ、おやすみ。」
するり、と音もなく、されど名残惜しそうに、ほどかれる指。
ボクはその手を掻き抱くように、少し身体を曲げて目を閉じた。
眠れるかどうかは、まだわからない。
けれども明日、目が覚めたら。
ボクがまだ知らない、恭一の生まれた街の空が、頭上に広がっているんだね
posted by 渡月・トワヤ
at 00:00:51 │
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SWEEEETedの洋館。
大広間に飾られたクリスマスツリーの下に置かれたプレゼントの数々。
まいおが東奔西走してくれたおかげで滞りなく、いよいよ待ちに待った交換会の時間!
「いっせーの…!」
「いっせ~の!」
「セーノォ!」
皆の掛け声が重なって、続いてガサガサと包みを開ける音。
ボクが引いたのは、表紙にエーデルワイスの描かれた綺麗なアルバム。
わぁ…
偶然に選んだものだったにもかかわらず、今のボクにぴったりな贈り物だ、と思った。
今までならば、思い出というものに、そこまで執着などしていなかったのだけれど……
現金なものだ。
彼と出逢ってからは、目に映る何もかもがキラキラと眩しくて、共に見るものすべてを大事に仕舞っておきたくなっていて。
彼と共に過ごすその時間のひとつひとつを、永遠に閉じ込めてしまえたら。
このアルバムがぱんぱんになっちゃうくらい、たくさんの想い出を作りたい──。
「あ、それ俺の選んだやつだ」
グラたんがボクの抱えたアルバムを見て、うれしそうに笑った。
「わ、そうなんだ?すごく綺麗なアルバムだよね。ありがとう、大事に使う!」
ボクも笑う。
周囲にあふれるのは、みんなの幸せそうな笑顔。
本当は、贈り物の交換という名目の、笑顔の交換会なのかもしれないね。
…ふと脳裏を過ぎる笑顔。
来年は、ここでも、一緒に過ごせたらいいな。
と、そこへ、真打登場!
ちょっとクラシカルな郵便屋さんのコスチュームに身を包んだまいおが、皆が手にした贈り物を見ながら、各々へカードを手渡していく。
「はい、トワヤさん」
にっこり笑って、ボクへもカードを手渡したまいお。
郵便屋さんのコスチュームだけれど、ボクにはサンタクロースに見えた。
みんなが笑顔で過ごせるよう一番心を砕いているのは、いつだってまいおだってこと、ボクは知ってる。
そんなまいおに、ボクは甘えちゃっているけれど。
来年も絶対、こんなふうにプレゼントの交換会、しようね!
posted by 渡月・トワヤ
at 16:47:01 │
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4泊5日、になるんかなぁ…?
ボクはカレンダーを指差しながら慎重に、何度も日数を数えた。
できるだけ荷物はコンパクトに。
それが、ボクが旅行(帰省含む)の際に心がける一番のこと。
日程が長くなればなるほど、持っていく本の量は相対的に増えるわけで。
愛用のキャリーバッグは、四角く形成されていて、本を入れるのに好都合なのだけれど…
そもそも、本って重いんだもの。
だから、どっかで帳尻を合わせないとなのだ。
8割がたの荷物を詰め終わったところで、ふぅと一息つき、明日からのことをぼんやりと考えた。心の中では、不安と緊張と嬉しさとがごちゃ交ぜになっていて、複雑なマーブル模様を描き出している。
正月を挟んでの(二人的)ビッグイベント。
うわ、すげぇ、二年越しだとも言える。
そうだそうだ。緊張しないほうが、どうかしてる。
これは正常な反応、うんうん。
落ち着かせようと自分に言い聞かせてるのは、
先ほど荷物にありえないもの(マグカップ)を詰め込もうとしてしまうほど、浮き足立っている自分を理解しているから。
やっぱり、一番根底にあるのは、嬉しさ…なんだよね。
うぅむ……
コーヒーでも、淹れるか。
階下でコンビニスイーツも買ってきちゃおうかなぁ。
なんかわかんないけど、お祝いしとこ。
posted by 渡月・トワヤ
at 23:48:50 │
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少し遅れたけれど、ハッピーバースディとクリスマスのお祝いを、と恭一がケーキを買ってきてくれた。
「おいしいね」
「うん、おいしいね」
ただそれだけの何気ない会話で、胸がいっぱいになる。
口の中で、ほろりと溶けるチョコレートは、
しあわせという名の、ちょっと不思議な味がした。
posted by 渡月・トワヤ
at 00:45:49 │
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きみのくちびるが触れた頬は、
今もまだ、熱を帯びているみたいで。
ボクの胸を、甘く切なく締めつける。