posted by 渡月・トワヤ
at 23:59:34 │
EDIT
図書館で借りた本を読み終わった。
薄い本だったし、単純明快な物語。
果たして、ボクに得るものがあったんだろうか、と本を閉じて考えた。
心に留まったことばは手帳に書き記したけれど、
「あぁ、判るなぁ」
と大部分において、納得することが多かったように思う。
説明するとなると、言葉にはうまく出来ないかもしれない。
そういえば……
自分の本棚を漁った。
これと似たような本を、持っていた気がして。
あぁ、あった!
今度はボクが、恭一にこの本のことを教えてあげたいなぁ。
PR
posted by 渡月・トワヤ
at 16:37:31 │
EDIT
「お目当てのものは、見つかったかい?」
「うん♪」
ボクは胸に、本の入った紙袋を抱えて満面笑顔。
昨夜「今日の放課後は本屋へ行こうね」と話していたので、予定どおり、ボクらは書店へ足を運んだ。
たぶん、このテの本ならば図書館にもあるんだろうけど、2週間という返却期限ではちょっと都合が悪いので、買うことにしたのだ。
ボクがその本を探す間、恭一は小説のコーナーに行くと言っていたけれど、どうやら頃合を見計らって、入り口付近でボクが出てくるのを待ってくれていたらしい。
その彼の姿を見て、ボクは胸がきゅっとして、それからなんともいえない温かさに満たされていく。
彼の、そういうさりげないやさしさを、とても嬉しく思う。
店から出て、しばらく歩く。
街路樹が美しく紅葉する通りに出たころ、ボクはまた、彼の手に指をそっと触れる。
posted by 渡月・トワヤ
at 01:30:59 │
EDIT
夕食やらなんやらを済ませて、恭一の部屋に遊びに行った。
── 今夜も冷えるらしい。
冬休みの予定。
どんな服を着ていこうかな、という話から、最近、自分の服の趣味が変わってきたということに触れた。
「どんなふうに?」と訊ねてきたものの恭一は、もともとあんまりファッションには興味がないようで、
「パンクにも飽きてきたし、最近はマニッシュな感じが…」とボクの話に、曖昧な顔をする。(関係ないけれど、その表情はちょっと可愛かった。)
まぁ、その人に似合っていれば、別段流行を追いかける必要も、特別着飾る必要もないし、興味の対象なんて、人それぞれだから、それでいいと思う。
うーむ。
もしかしたら、”自分じゃない誰かと一緒に在る”という醍醐味は、こういうことなんだろうか。
知らなかったことを教えあい共有する。
そうしていくことで、他の何でもない「ボクら二人」という世界が構築されていくのかもしれない。
少し前にも、違う話題の中で恭一が「服にはあまり興味がない」と言っていたっけ。
ボクのセンスを押し付ける気はさらさらないにしても、恭一はどんな服が似合うんだろうか、なんてことを、実は今日の昼休みに考えていたのだ。
というのも、あることを思いついたからに他ならなくて。
「……内緒にしとこうかと思ってたけど」
サプライズが好きだから、本当は内緒にしておきたかったことがある。
しかし毎日のようにこうして一緒に過ごしていると、とても隠しとおせるもんではない。
それでなくても、ボクはすぐ顔に出てしまうのだ。
まったく初めてというわけではないにしろ、こんなに大きいものに挑むのは初めてだから、うまく出来るかどうかわからないという不安があって。
でも口に出せば、後には引けなくなる。
ほら、オトコに二言はないって言うじゃないか(……いや、ボクは間違いなく女子だけどね!)
そう考えたボクは、あえて彼に聞いてもらうことにしたんだ。
ボクの打ち明け話に恭一は目を見張り、それから微かに頬を上気させた。
「本当かい?楽しみにしているね」
そう言って彼は、本当に嬉しそうに笑う。
不思議なもので、その笑顔を目にした瞬間、口に出した時以上にやり遂げられそうな気がしてくる。
「ありがとう」
なんだか判らないけれど、ボクは恭一にそう言わずには居られなかった。
それからしばらく、恭一は本を読んでいたし、ボクは手帳にあれやらこれやら書き込んでいた…はずだった。
ふゎ、とあくびを噛み殺し、彼に「眠たくなったかい?」と訊ねられたところまでは、憶えている。
「………ぁれ」
気づいて顔を上げると、見慣れない部屋。
え、なに。ここどこ!?
しばらく続く混乱のあと、あぁここは恭一の部屋かと思い至る。
肩には、毛布がかけられていた。
「あ、起こしちゃったかな」
ボクはどうやら、手帳を枕にテーブルに突っ伏すようにして眠ってしまっていたらしい。
毛布は恭一がかけてくれたものだった。
「…うんー、、、ボクは寝てたんか……?」
目が、半分ぐらいしか開けられない。目を覚ましたものの、睡魔は未だ襲ってきている。
「大丈夫?家まで送るよ」
恭一の声が、遠く聞こえた。
ボクは恭一に手をひかれるまま歩く。
正直、半分以上寝ていた。
無事に帰れたのは、恭一のおかげに他ならない。
posted by 渡月・トワヤ
at 16:27:25 │
EDIT
「んじゃ、帰ろ」
「ああ。そうだね」
校門を過ぎ、下校する生徒の波が疎らになってくるあたりになるとようやく、ボクは恭一の左手に自分の指を伸ばす。ボクの指が触れると、彼はごく自然なしぐさでその指を自分の手の中に包みこむ。
一緒に下校するようになってすぐの頃、
「手を繋ぎたいけど恥ずかしい…!」
と言って苦悩する(ただのワガママな)ボクの姿を見て、
「トワヤが手を繋ぎたくなるタイミングでかまわないよ」
と恭一は微笑ってくれた。
彼は決して、ボクに無理強いしたりせず、いつだってボクの想いを尊重してくれる。
そして、彼のその想いに報いるには、ボクはすっかり甘えてしまうのが良いと考えている。
でも……
一緒に帰るようになって早2週間ぐらい経つのに、相変わらず心臓はドキドキしていて。
もしかしたら、繋いだ手から、早鐘のような鼓動や、ひいてはボクの気持ちまでが、彼に伝わってしまうのではないだろうか。
そんな気さえ、してくる。
秋の陽射しは、紅葉の始まった木々の葉にやわらかく反射して淡いオレンジ色に揺れている。
「ねぇ、トワヤ」
恭一がボクの名を呼ぶ。その声はいつも、まるで陽だまりのように暖かい。
「…ん?」
揺れる木漏れ陽は眩しくて、
吹き抜ける風の音ですらやさしくて、
もし、しあわせというものを五感で感じることができるのならば、まさに今、ボクが感じているすべてのことがそうであるに違いない、と思う。
ボクは目を細めて、彼を見上げた。
ボクを見つめ返すその蒼の瞳にも、同じようにやさしい午後の光が揺れている。
いつまでもこうして手を繋いで、同じ速度で同じ景色の中、歩いていきたいと願う。
posted by 渡月・トワヤ
at 10:02:26 │
EDIT
ボクが小学生のころに読んだ本で、日記に次の日のことを書くと、それが翌日、本当に起こっていくという話があった。
細かい内容はあまり憶えていないけれども、「翌日の日記を書く」という発想が面白かったことと、ダイナミックな線で描かれた絵、ブタが空から降るというオチが良くて、未だにその本のことは良く覚えている。
今日、ふとした折に耳に挟んだ話。
「予祝」
という言葉があるそうだ。
現在では、良いことがあったからお祝いをする、というのが常識だけれど、昔は「良いことが起きたのは、予め祝っておいたからだ」という発想があったそうで、事柄に先んじてお祝いの席を設けたりしていたそうだ。
たとえば、田植え祭。あれは、苗を植える時点で豊作を祝っておく行事なのだそう。
「神さま、今年も豊作にしてくれてありがとうございまーす!」
とまぁ…先にお礼を言われちゃったら、神さまだって、もう聞き届けてあげるしかなくなるよね…と思うのは、ボクの浅はかさだろうか。
とまれ、それはどこかしら祈りにも似た願いなのかもしれない。
それほど大仰なことではないのだけれど、
スケジュール帳に記す予定も、予祝みたいなものなのだろうかと、ふと思った。
まだ、本決まりでなくても、待ち遠しい予定は待ちきれずに書いてしまうし、書くことによって、
心の準備が出来、心と身体がそれに向けて動き出すのを感じる。
「強く望めば、必ず叶う」
という、ボクの好きな言葉に通じるものもある気がする。
まだ先のことで、詳しいことはまだなにも決めていないけれど。
ボクの心を反映しているかのようなさくら色の付箋を取り出し、それに"f"とだけ記して12月のページに貼り付けた。
それから、何度もページを開いて見ては、自然とやわらぐ表情。
心は、少しばかりソワソワしつつ。
── All because of you.
こうして。
これからの毎日が、たくさんの予祝としあわせな記憶で埋まっていけばいい。