posted by 渡月・トワヤ
at 23:59:59 │
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ボクの手を握り、隣を歩く恭一は
「…ゴーストタウンでデートって……」
そう言って、苦笑する。
いわゆる、Wデートの帰り道。
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「お疲れさまっしたー」
ボク以外の3人は、帰り道が同じ方向 ── いや、寮なのだから同じ場所か ── なので、ボクはぺこっとお辞儀して、帰宅の途につこうとした。
けれど直後、先輩たちと一言二言話した恭一が、ボクの手をひょいと取り、
「家まで送るのは、当然じゃないか。」
と笑った。
「え…あっ、うん……ありがと。あ…ども、失礼します」
戸惑いながら後ろを振り返り、再度先輩たちにお辞儀して、ボクも歩き出す。
…何となくだけれど、背中への視線を感じつつ。
「ね…先輩たち、ボクらのことまだ見送ってるみたいじゃね?」
手を繋いでるのを見られて、なんだか恥ずかしくて、そわそわ落ち着かないボクに
「今更、だよ。あの初デートの時も、しっかり見られてたみたいだった。」
恭一は、少し困ったように笑って言う。
繋いだ手は、もちろんそのまま…むしろぎゅっと強く握られたような気すら、する。
今日は、恭一の寮の先輩カップルに連れ出されて、ゴーストタウンヘ出かけたのだ。
先輩はボクに、最近恭一が幸せそうなんで、ボクにも会ってみたくなったんだと言った。
その言葉を聞いて、ボクは胸が熱くなる。
恭一が、傍目からでも幸せそうに見えるということ。
その事実が、ただ嬉しい。
少し熱い頬を夜風が撫でていく帰り道。
繋いだ手に視線を落としながら、
「ね、恭一…先輩って、良い人だね」
とつぶやく。
恭一はボクの方を見て、
「ああ。僕の尊敬する人だよ」
と嬉しそうに微笑んだ。
恭一は、ゴーストタウンのデートだと苦笑いするけれど、
ボクは恭一と一緒なら、どこでだって楽しいんだよ。
posted by 渡月・トワヤ
at 16:09:52 │
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* SWEEEETed *では、ハロウィンの準備に皆、右往左往。
皆で、和気藹々とお菓子の家を作ったり、南瓜提灯やプリンを作ったり。
ハルカは
「家を建てるには、土地が必要ネ!」
と言って、どこで焼いてきたのか、60センチ四方のでっかくて分厚いスポンジケーキを持ってきた。
まいおも、ハロウィンらしい、たとえばこうもりや黒猫、おばけの形のお菓子を仕入れてきている。
いったい、どこで見つけてくるんだろうなぁ、と感心しきり。
ボクも、オレンジ色の南瓜をくりぬいて、提灯を作ろうかな。
どうせなら一緒がいいから、と恭一も誘ってみた。
「あんまり、手先は器用じゃないんだけど……」
と少し遠慮がちな彼の手を引っぱって
「そのほうが個性があって良いじゃん♪」
ボクは笑った。
先に来ていたメンバーの手によって何個か作られた提灯が既にテーブルに並んでいる。
「へぇ…可愛いね!」
ボクはひとつずつ手にとって、それを眺めてみる。
同じような表情のもあるけれど、そこはやはり手作りのよさで。
目の角度、口の大きさもそれぞれ少しずつ違って、同じものはひとつとしてないんだね。
やっぱり最初に作るのは笑顔。それも、大きく口を開けたヤツがいい。
表情を決めたら鉛筆で軽くアタリを取り、えい、とナイフを突き立てる。
ボクはちょっとおっちょこちょいで大雑把だという自覚はあるから、ナイフを扱う時には慎重にしよう…。
隣に座る恭一の手元を見てみると、「不器用だ」と言ったあの言葉は謙遜ではなかったんだ…と思いながらも、それは、とても愛嬌のある表情。
恭一の真剣な面差しにも、ボクは好感を覚える。
「へぇ、上手く出来てるじゃん。可愛いと思うよ」
と声をかけて、
「……そうかな」
と少し困ったような顔をする恭一に、にっこり笑いかけた。
一緒に何かできるというのは、とても嬉しいことだね。
隣に恭一が居るから…本当はそれだけでも、ボクは十分に満足なのだけれど。
posted by 渡月・トワヤ
at 16:16:42 │
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人にはそれぞれ良いところがあり、違っていて当たり前。
個性なんて、放っておいても、出てくるもので、作るもんじゃない。
たとえ誰かから見れば、それが単なる我が儘にしか写らなくとも良い。
これがボクのやり方だから
「だから、どうした?」
と胸を張ればいいんだ。
SWEEEETedの庭先を散歩していて、そう思い至った。
金木犀の甘い香りに誘われるように思い出すのは昨日のこと。
ワガママであってはいけないという、自分への呪縛がはらりと解けたような。
あ、そういえば。と空を仰いだ。
「もっと、ワガママになったって良いのに」
と、ある人に言われたことを急に思い出した。
その人は、何気なく言ったのかもしれない。
けど、今なら、そう言われた理由が、いやになっちゃうぐらい理解る。
あぁ、そういうことだったのか…と、ボクは苦笑い。
あの時、その言葉の本当の意味に気づけなくて……ごめんね。
posted by 渡月・トワヤ
at 22:52:25 │
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運動会の熱気も未だ冷めやらぬ校庭。
…まぁ、熱気が冷めないのは当たり前かもしれない。
なにしろ校庭の真ん中では盛大にキャンプファイヤーが催されていて、その炎は夜空を焦がすのではないか、と思うほどの勢いで燃えあがり、ボクらを照らしているのだから。
去年の後夜祭。
まったく興味がなかったボクは、運動会が終わるとさっさと自室へ帰ったのだった。
だから、後夜祭がここまで盛大に行われていたなんて、知る由もなく。
キャンプファイヤーで踊った二人はカップルに…なんていう噂があるのも今年知ったこと。
そういわれてみれば。
去年の運動会の後に彼女が出来た友だちに馴れ初めを聞いたら
「気になってたから、フォークダンスに誘って…」なんてことを、言っていたっけ。
そして、今年。
恭一が一緒にフォークダンスを踊ってくれないかな、と誘ってくれた。
嬉しいような、恥ずかしいような…。
差し出された手に、そっと重ねる手。
「リズムに合わせて足を出せばいい」
そう言って、ボクにしか聞こえないように耳元で、右、左、と足運びを教えてくれる。
正直、恥ずかしがってる余裕なんてなかった…!
音楽に合わせて足を出すことだけで、もう必死なんだって!
(しかも超へっぴり腰…)
フォークダンスなんて初めて踊るから…などと、言い訳をしていれば
うっかり足を出し間違え、慌てて引っ込めた瞬間。
「……っ」
繋いだ手に走った、一瞬の緊張。
「わわ…ごめん!足踏んづけたよな!?」
こういうときに足を踏むのは、ベタな展開だけれど。
ますます慌てるボクに、恭一は「大丈夫だよ」と笑ってみせてくれた。
「時間はまだ、あるんだ」
恭一の声に、ボクは少しずつ、落ち着きを取り戻す。
フォークダンスって本当は、順繰りなのかもしれないけれど。
ボクらは、音楽が終わるまで、ずっと手を重ねたままだった。
──頬が熱いのはきっと、キャンプファイヤーが照らしている所為だからね。
posted by 渡月・トワヤ
at 23:59:59 │
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…ふぅ。。。
いたたまれない気持ちを抱えたまま、ボクは1冊の本を閉じた。
色々と、考えさせられる小説だった。
どこまでも救いが見えなくて。
暗く、冷え冷えと乾いてしまったような世界。
太陽が消えてしまった世界とは、こういう世界なのだろうか。
とかく、ハッピーエンドが好きなボクは、
この物語を読み進めるのに、えらく時間がかかってしまった。
ページを繰る手ですら先を望んでいないみたいに、ただ辛く重くて難儀した。
読み終えた今も、胸が痞えてしまったようで。
物語に引っ張られすぎているのは、重々承知。
でもしょうがない、これがボクだものな。
だから、次は、ハッピーエンドを求めよう。
自分が好きな話を再度読み返してもいいな。
えぇと。
その本はどこだっけな(自分の本棚を物色し始める