posted by 渡月・トワヤ
at 15:35:05 │
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新調したばかりのトートバッグを手に、街へ出かける土曜日の午後。
ゲームのレベルアップもしなくちゃだけど、
とりあえず、こっちのが優先!
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昨日、フルるんが部屋に遊びに来てくれたのは良いが、
普段使いのマグカップでコーヒーをサーブするという失態をやらかしたボク。
いくら友だち相手とはいえ、お客さんに対して、アレはちょっといただけない。
気にしない人はそんなこと気にも留めないんだろうけど…
どうせなら、綺麗なカップで飲む方が気分がいいし。
まぁ、自己満足だな。
まだ、ちょっと歩き慣れない鎌倉の街。
ネットで下調べをした、とある駅に程近いショッピングモールへと足を運ぶ。
さすがに土曜日なだけはある。
人出も多く、賑やかなざわめきは途切れることがない。
ボクは一人だということもあって軽やかに人の波を掻き分け、目に付いた店に次から次へと飛び込んでいく。
そのうちのひとつ。
女の子らしい可愛い雑貨が並ぶ店を発見!
店内の装飾が、ちょっとピンク率多そうで、少し迷ったけれど。
まぁ、負けてはいられないのだ!
店内へと足を踏み入れると、ポップな音楽に混じって、
友だち同士で買い物に来ている女の子の楽しげな会話も耳に飛び込んでくる。
ボクはそういう人たちを遠巻きに眺め、
自分にはこんな経験ほとんどないなぁ、と妙な感慨を覚えた。
まぁ、その分、何にも縛られず自由に歩きまわるスタイルを確立できたワケなのだけれど。
ふと、ひとつの棚の前。
淡いライムグリーンのマグカップが目に留まった。
エンボスの模様がぐるりを取り囲み、シンプルで機能的ながらとてもおしゃれだ。
ボクは一目で、それを気に入った。
価格も女の子相手のお店ということで、思った以上にリーズナブル。
これは"買い"だろう!
その後も、ふらふらとモール内を歩き回り、CDショップへ辿り着いた。
欲しいCDが何枚かあって、まぁでも、お財布の中身と相談なワケだけれども…
とりあえず見るだけ、見るだけ…うん!
初めて来た店で勝手が飲み込めず、演歌のコーナーに迷い込んで慌てたりして。
なんとか、目当てのコーナーに行き着き、並んでるCDを物色している背後から
「あれー?トワヤさんだ…ですよね」
と、ボクの名前を呼ぶ声がした。
振り返ると、赤い髪──図書室で出会った彼──舞皇がそこに立っていて。
「おぅ。なんだ、まいおか。こんなトコで会うなんて奇遇だなぁ!」
にやっと笑って向き直った。
「何を探してるの…探してるんですか?」
一応彼は、ボクを目上として認識しているらしい。
丁寧に話すように心がけている様子がなんだか可愛くて、ボクはくすくす笑いを堪えられないワケだけれど。
そんなボクをみて、些か膨れる様もまた可愛らしい。
「いや、ちょっとね。欲しいCDがあるんだけど」
「え、誰の? …が欲しいんですか?」
やっぱり、慣れないらしくて、取って付けた感ありあり。
そんなの、気にしなくて良いのになぁ。
ボクはどうしても、ニヤニヤしてしまう頬を止められないのだった。
posted by 渡月・トワヤ
at 23:59:59 │
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夜、コンビニ前にて。
ぷらぷらと散歩(という名目の狩り)から帰ってくると、フルるんが立っていた。
彼女は帰ってきたボクに気づくとにっこり笑って手を振る。
ボクはそれに応えるように少し手を上げて彼女に駆け寄った。
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彼女はボクを訪ねて来たはいいけれど、ちょうど(狩りに出かけてて)留守だったので、どうしたものかとコンビニ前で思案していたところだったのだという。
彼女が諦めて帰ってしまう前に、ボクが戻ってきて良かった。
「ここじゃなんだし、ボクの部屋に来る?」
コンビニで菓子を買い、コインランドリーで終わった洗濯物を取り込んで、ボクの部屋へ。
コーヒーを淹れ、彼女にマグカップを手渡し、
「ごめんな、洒落たカップなんてないんで」
とバツが悪そうに笑うと、
彼女は「気にしないでください」と微笑んでくれる。
(明日、ちょっと良い食器でも買いに行くかなぁ…
そんなことをぼんやりと思う。
来週から彼女は修学旅行に出る。
行き先は沖縄だそうだ。
しかしその前に、この紫陽花会館への引越しという一大イベントも待っていて、慌しくなりそうだ。
「きっちり手伝うから、任せとけよ!」
にっかり笑って、力こぶを作ってみせる。
うふふっと彼女の笑顔が揺れた。
そういえば──
彼女は、料理が得意だって言ってたなぁ。
ボクはあることをひらめいた。
「なぁなぁ、お願いがあるんだけど」
「はい、なんでしょう?」
コーヒーを一口啜り、
「来週、フルるんが此処に越してきて、それからすぐに修学旅行だろ?
それで、帰ってきてからで良いんだけど」
視線を一度落とし、それから顔を上げて
「フルるん、料理が得意だって言ってたから。
もし良かったら、食事のお呼ばれっこしない?」
一人で食う食事も、なんか味気ないなぁと思い始めていたところだった。
彼女はその申し出に、わぁと手を叩き
「ぜひ、喜んで!」と乗り気になってくれた。
好き嫌いはあるかとか、どんなものが食べたいかとか、互いにリサーチ。
そこでもう一提案
「そうだ、第一回目のお呼ばれは、「それぞれの国のお袋の味」ってテーマでどう?」
すると彼女は
「わ、素敵です。お野菜たっぷりの煮ものなんて食べてみたいかも」
彼女はまだ、日本に来て1年目だし、
日本の味って、あまり馴染みがないかもしれないけれど、
きっと彼女なら、気に入ってくれるはず。
かたや、彼女の国のお袋の味ってどんなだろうなぁという、純粋な興味もあって。
「来週が楽しみだね!」
そう言って、二人でニコニコと笑い合った。
posted by 渡月・トワヤ
at 23:59:59 │
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梅雨入りしたってぇのに、
連日、ほとんど雨の降る気配がない。
そのくせ、湿度は高くって、空気が肌に纏わりついてくるよう。
ガッコでは、完全招待制のオンラインMMORPGが流行っている。
ボクも友だちから勧められて、登録をしてみた。
ボクが作ったキャラは、メイジ。いわゆる魔法使いってヤツだ。
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今回の仕事。
次の日曜日に迫ったこのゲームのイベントを、そこに隠されていた恐ろしい陰謀を阻止すること。
(ちょ!実質、1日しかないじゃんか!!!
ガッコのリサーチの遅れが災いして、強行軍も良いところだ。
しかも、サーバーの場所が判らず、物理攻撃もダメ。
コンピュータ内に潜入できるメガリスもないから、ハックも無理。
結局、ボクら能力者を一般プレイヤーとしてインさせ、数と勢いでゴリ押し…らしい。
裏に手をまわしたか、誰か一人が無事にアカウントを取得するやいなや、
生徒たちがそれこそ蜘蛛の巣状に、同級生や先輩などを次々に招待していって
ガッコの思惑通り、かなりの人数が登録したようだ。
潤沢な資金にモノを言わせて、レベルアップ用の課金アイテムも支給してもらえるらしいが。
そういうレベルの上げ方じゃ、操作方法覚えきれねーよ!?
魂吸われたら、どーしてくれようか?
ミイラ取りがミイラに…とか、なんとか…。
まぁ、ともかく。
ガッコ公認で、ゲームに現をぬかして良いってことだよなー!!
なんとか自分の力でレベルも上げたい。
んで、せめてウォーロックぐらいになれれば、操作を間違えることもない
…
……だろうと思う、あんまり自信はないけどな。
posted by 渡月・トワヤ
at 23:59:59 │
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相棒が申請した結社の設立が受理されて、数日が経った。
今、相棒は作業服に着替え、埃にまみれながら、結社の運営のための準備作業に追われている。
アイツには、アイツのやり方があるだろうからボクは手出しをしない。
しかし、求められればすぐにでも応じられるよう、ある程度彼から離れた場所で、
風の通り道を探し出して座り、待機している…という表向きで、
ただぼんやり眺めているだけだったりして。
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ガッコからの斡旋状を手にした入団希望者の出迎えは、
最初、ゼンが入ってきた流れもあって、ボクがやっていた。
入ったのに出迎えがないって寂しいなぁ、っていう思いからしていたことだけれど、
ちょっと越権行為かな、って、それが少し心にひっかかっていた。
「あぁ、せや」
相棒がふと思い出したように、作業の手を止めてボクを振り返った。
「入団者の出迎え、ありがとやで」
そんなことをなんとなくボンヤリ考えてた矢先に、その台詞だ。
なんなんだ?なんで解ったんだ!
慌てるこちらを気にもせず、
「俺が今こんな格好やから、出迎えるのもアレやしなぁ」
笑いながら向き直り、また作業を始める相棒。
あぁ、たまたまか。
「なんとなく思ったんだけどさ。
なんかボクが接客担当で、カナメが奥の厨房で調理してる店主ってイメージだな」
「ぉっ!?」
屈んでいた相棒は、小さく声を上げて、突然作業の手を止め立ち上がった。
腰に手を当てて、大きく深呼吸し、
「言い得て妙やね」
とにっかり笑った。
ボクらの間に、これからまた涼しい風が、吹き抜けてくんだろう。
posted by 渡月・トワヤ
at 16:31:11 │
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すべてはこの時間のための
朝起きて
テレビをつけて、時間と天気を確認。
カーテンを開けて、布団を上げ、
天気が良かったら、少し窓も開く。
ちょっとぼんやりしながら、パンを1枚トースターに放り込んで、
コーヒーを落としてる間に洗面台へ。
パンを食べ、カフェオレを飲む。
10分後には忘れちまうテレビの占いを気にしながら。
朝飯が終わったら、
昨日の晩飯のおかずを温めなおして、玉子焼きを作って青い野菜を茹でる。
弁当箱に、気持ち少なめなご飯と、おかずを彩り良く詰めて。
粗熱を取る間に、食器類を洗う。
制服に着替えて、もう少しぼんやり。
あぁ、窓を閉めなくちゃな。
ガッコはいつもどおりだけれど、
テストが終わったからか、クラスの皆とのんびりと談笑。
学生証が続々仕上がってって、皆で見せ合いっことか。
大体寄り道はしないで部屋に戻る。
晩御飯は何にしよう。
冷蔵庫の中身を思い出しながら、もう簡単にざるうどんとかそうめんとか
もう、今日はそういうのでいいか、って、
一人で食う飯も、あんまり美味くないし。
よし!
今日は、贅沢な風呂にしよう。
この間、フルるんに貰った、バラの香りのバスビーズがあったはず。
もったいなくてなかなか使えなかったけれど、
こういう日のために、置いていたのかもしれない。
淡い桃色の湯に身体を沈めたら、
バラの甘くて酸っぱい香りが、ボクを包む。
頬まで沈んで、勢い良くぶくぶくぶくっと息を吐き出して、遊んだ。
霧のように小さい飛沫が、睫毛に留まる。
まるで涙みたい。
髪の毛をざっくり乾かして。
Tシャツと、カットソーの長ズボン。
パーカーを羽織って、鍵とケータイを持ったら、サンダルを履いて部屋を飛び出す。
とくんとくんと鳴る心臓には、気づかないフリ。
「カーナーメー!!!!」
大声で名前を呼びながら、隣室のドアチャイムを鳴らす。
すべては、この時間の為の、いちにち。