posted by 渡月・トワヤ
at 11:10:36 │
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「うん、それじゃあ行ってくる」
ボクが玄関を締めるまで
母はその不安げな表情を変えなかった。
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駅までは、父親に車で送ってもらった。
20分ほどの時間、あんまり会話はなかったけれど、
元々父はそんなに饒舌ではないから、気にも留めない。
「次に帰るとしたら、夏休みになると思う」
ボクの言葉に
「そうか、まぁ元気にしてたら、それでいい」
と言い、母さんにはたまに声を聞かせてやってくれ、と付け足した。
いよいよ駅が近づいた。
ボクは、窓の外を眺めたまま、
「父さん、銀誓館学園にボクを送り出してくれて、ありがと」
一息に言い切った。
父は短く「あぁ」と一言返しただけだった。
それでも安心したように、大きく息を吐き出すのが聞こえたから、
ボクはもうそれ以上言うことをやめ、
懐かしい町並みにまた、別れを告げるように、
流れる景色にぼんやり視線を走らせた。
posted by 渡月・トワヤ
at 08:46:26 │
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生家に帰ってきたものの、別段会いたい人もなく、
やることも行くトコもない。
父から何冊か読み終わった本をもらって、
リビングのソファで、ごろごろ読書三昧。
posted by 渡月・トワヤ
at 22:00:05 │
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P.M.10:00
自室にて。
ベッドに寝ころび、携帯を開いては、暫く何かを物思う。
かと思えば、吹っ切るように携帯をたたんで、ため息。
それをもう、10分強も繰り返していたようだ。
「えぇい、ままよ」
意を決したように、ベッドの上に座った。
――(何度目かのコール
『あー、もしもし?』
「あぁ、カナメ?ボクは誰デショウ」
『トワやろ?んなもん解るわ。番号も出てるやんけ。で、なんや?用か?』
いつもの笑い声。
「あぁ、えーと、それで…」 逢いたい…
『うん?』
「用事なんかねーよーだっ!」
『いきなりかけてきて、なんやねん!意味わからへんわ』
きっと、電話口で、笑ってくれてる。
「じゃな、おやすみ!」
――ツーツーツー。
posted by 渡月・トワヤ
at 14:42:07 │
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持ち歩いているシステム手帳。
5月3日のページには、小さい文字でごちゃごちゃと書き記されている。
・キャベツたっぷりのクラムチャウダー
意外と簡単そうだ。クラムの代わりにツナを使うのもいい。
・ブロッコリーのチーズ焼き
ブロッコリーを茹でて、チーズを載せてオーブンで焼く…
オーブンねぇよ!!!ちくしょぉぉぉ(こういうところまで律儀にメモっている
・トマトスープ
トマト缶を使う。コンソメと少しの塩。野菜はさいの目に切って、あとは煮るだけ。
・切り干し大根の煮物。
適当にやる。
posted by 渡月・トワヤ
at 12:25:43 │
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P.M.0:25 逢いたいヒトが居る。
昨日、顔を見たばかりなのにもう逢いたいなんて。
ボクはどうかしちまっている。
「…おはよ」
まだぼんやりする頭で、リビングに降りた。
別に夜更かしをしたわけではなかったけれど、まったく起きられなかったのだ。
「おはよう、ってもうお昼過ぎてるわよ」
ダイニングテーブルで新聞を読んでいた母は半ば呆れるように笑って言った。
「父さんは?」
休日の父の行き先など分かりきっていたけれど、なんとなく口を突いて出た言葉。
「トワが帰って来てるからって、父さん張り切って出掛けたわ。
きっと今日はご馳走よ」
父の趣味は釣りだ。
小さい頃は、海に連れて行ってもらったりも、良くしたっけ…
「魚、久しぶりに食べるかも。
楽しみにしてよっと!」
昼飯を食べながら、話は自然、学校生活のこと、一人暮らしのことになる。
「だーかーらー。
このあいだの電話でも言ったろ。
ちゃんと食ってるってば」
心配してくれる相手が居るというのは、幸せなことだ。
わかっているけれど、あんまりしつこいと、な。
ただし、相手が誰であろうとご機嫌を損ねるのは、性に合わない。
ボクは話題を少し反らすことにした。
「あぁそうだ。野菜使ったメニュー。サラダばっかじゃ飽きちまう。
なんか簡単なの、教えてヨ?」
そう言うと、母は嬉しそうに笑った。